赤い狼と黒い兎



投げ掛けられた言葉はすべてスルーし、音楽室を出た。



「なんか見つけた?」

『…居場所くらいだな』

「え、居場所さえわかればいいだろ!」



琉樹といい唯兎といい、何でこうも無鉄砲なんだよ…。



『どうする気だ?』

「え?」

『居場所がわかったからってどうする。潰しにでも行くか?何の策も無しに…』

「……」



唯兎は何かを言いかけてやめ、少し悩んだ。

バイクが置いてあるグラウンドに着き、鍵を差し込んだ。



「…その、」

『あ?』



バイクに股がったところで唯兎が口を開き、そっちを見た。



「その、馨が言う“策”…ってなんだ?」

『……は?』

「何事にも作戦って必要か?時には本能のまま、自由に動いたっていいんじゃねぇの?」

『………。』



急に、なんだ…こいつ。

驚きで開いた口が塞がらない。



『…逆に問うよ。お前は何故そう思う』

「え!?」



じっ、と唯兎を見詰めると「う〜ん…」と唸り、頭を掻いた。