赤い狼と黒い兎



「ヤバい?」

『嶽は素手じゃ戦わない。いつもポケットにナイフを入れてる。…まぁそれでケガした奴は何人もいるんだけどな』



アイツにとってナイフは体の一部。

もうナイフがお守りだと言っても過言ではない。



「…ナイフ、か」

『アイツの仲間だってそんなんばっかだ。ナメてかかったら一発で殺られるな』

「用心しないに越したことはないよ」

「……でも、何でまた…」

『…仕方無いよ、それは』



苦笑いのような笑みを浮かべ、目を伏せた。



『あたしのせいだからね、今回の事全部…。』

「馨…」

『チームのみんなも朱雀も、関係ないのに巻き込んで……』



チームや朱雀は一番関係ない。

それでも狙うのにはそれ相応の何かがあるんだろう。



『もう終わった事なのに、な…』

「…馨は悪くないよ!悪いのはアイツの…」

『瑠衣が死んだのはあたしのせいだから。…ま、嶽の目的はたぶんあたしだよ』



すると、音楽室の扉ががらがらと開いた。



「たっだいま〜」

「馨ー、買ってきたよ〜ん」

「あ〜疲れた〜」

「あ、ひまの病室にケータイ忘れた!」



…何してんだ、唯兎のやつ…。