“カツカツカツ…”



「あっ先輩!!」



顔を上げると、息を切らせた様子で若菜ちゃんが立っていた。



「ハァハァハァ…ケッケンチャンはっ!?」



「えっ?」



“ガシッ!”



若菜ちゃんは、力強く私の両腕にしがみつく。



「ケンチャン!ケンチャンは!?」



あっ……



若菜ちゃん、ケンチャンを追い掛けてきたんだ。



「あっ、ケンチャンあっちに……」



私が向こうを指さすと、若菜ちゃんはその差された方へ走り出した。



その姿がまるで、もう一人の素直な自分を見ているようで……



本当は追い掛けたいのに追い掛けない頑固な自分に腹が立った。


無気力な体で式場に戻ると、すでに式は終わっていた。



参列者達がロビーに群がってさっきのジンの話しで盛り上がっていた。



私はそこにあったソファーに力無く座り込む。



手には、ケンチャンから貰った携帯番号の書かれた紙切れを持ったまま…



話しって何かな…



仁の事だよね、やっぱ。



俯く視線の先に誰かの足が見えた。



見上げると、弘人だった。