“ガチャンッ”


『うっせーくそ女!!』


すごい勢いでドアが開いたかと思うと、中から怒鳴りながら誰かが飛び出して来た。


なっなんだ!?


私は、放心状態で身動きさえ忘れてしまった。


すると、飛び出して来たその男と目が合う。


そして男は、眉間にしわを寄せながら不機嫌そうに私にこう聞いた。


「誰、あんた。」


「へっ…!?あっ。」


「なんか用?」


今にも掴み掛かってきそうな雰囲気で私の顔を覗き込む。


「あっあの……私、隣に引っ越してきたもので……あっあいさつに。」


「あっそ。そんなもん別にいいから、そこどいてくれる?」


「え…?」


男がギロっとこちらを睨み付ける。


あまりのド迫力に私は返す言葉もなく、怖々道をあけた。


男がチッっと舌打ちして私の前を通り過ぎていく。


私はただ去っていく男の後ろ姿を、呆気にとられて見守るしかなかった。


――しばらくして、我に返る。


「……あっ石鹸!」


あまりに突然の出来事に驚いて、粗品を渡すのを忘れてしまった。


ふぅ、また出直さなきゃ……。


重い足取りで部屋に戻って考えた。


ちょっと待って。。。これって……


これって…


まさに、最悪の展開じゃん!!


――楽しいはずの私の一人暮し計画は、その“隣人”の出現によって波乱の幕開けとなったのだった。