翌日、若菜ちゃんの提案で例のライブハウスに行ってみることにした。



「ここですよ先輩!」



若菜ちゃんが指差した先にあったのは、それ程大きくないライブハウスだった。



へぇ…、こんな所にあったんだ。



あいつはいつもここで歌を唄ってるんだよね。



本当、想像もつかない光景だな。



よく見ると、店の周りに若い女の子がたくさん集まっている。



「この子達は何してるのかな?」


「出待ちですよ出待ち!」


「出待ち!?」



芸能人並だなぁー



「そんなに人気あるんだインディーズバンドって!」


「ここにいるのは、ほとんどジン目当ての子達ですよ。」



「えっえぇー!?」



あいつこんなに人気あるわけ?!



あの無愛想男が!?



しばらくすると、女の子たちが急に騒ぎ出した。



みんなが見つめる先を見ると、あいつがいた。



仁は帽子を深く被り、顔を隠し女の子に揉みくちゃにされながらライブハウスの中に入って行った。



あいつの人気を目の当たりにしてもまだ信じられない。


「先輩入りましょう!」



えっ…入るの!?



若菜ちゃんに引っ張られて恐る恐る中へ足を踏み入れた。



薄暗い会場では、他のバンドが演奏をしている最中。



正直、退屈なライブばかりだった。



聞いていてもなにも感じない……そんな演奏が6曲ぐらい続いた後、急に客席がザワつき始めた。



前にいる女の子達が話している。



「次マイクロシティだよ!」


「早くジンの唄、聞きたいねー!」



“マイクロシティ”…



それが、あいつのバンドの名前らしい。


しばらくして薄暗い舞台の上に、5人の男性が出て来た。



その中に、あいつはいた。


客席がキャーキャー騒ぎ出す。


すると、前触れもなく突然ライブは始まった。