2ヵ月前に彼氏と別れたばかりの若菜ちゃんは、新たな恋を探していたらしく私の隣りに“若い男”が住んでいると聞いた時から、実はお泊り計画を企んでいたらしい。



これだから女は怖い……。



「はぁ~楽しみだな~。」


クルッと手の平を合わせて一回転。



あららっ……


完全に妄想の世界だな。



期待に胸を膨らます彼女が気の毒だ……。



次の日、若菜ちゃんは本当にお泊りセットを持ってうちへやって来た。



「お邪魔しまぁす!」



「……どうぞぉ。」



上機嫌で荷物を置くと、わき目もふらず壁に耳を当てて隣りの様子を伺い始める。



「……物音しませんね。」


「たぶんまだ帰ってないよ。」


お茶を入れながらそう言った。


「えっ先輩、お隣りさんの行動まで把握してるんですか?」


はっ!?



「ちっちがうちがう!なんとなくわかるじゃん、音がする時としない時で!」



なんで焦ってるんだ、私。


若菜ちゃんは急につまらなさそうに座り込む。



「……あれ!?」



そしてすぐ何かに気付いたように立ち上がる。



「なんか……猫の鳴き声しません?」



なっ…


なんて地獄耳なんだ。



再び壁に耳を当てる。



「あっやっぱり聞こえる!お隣りさんですよ。」



「なんか……飼ってるみたい、猫。」



「へぇ~、クールなのに動物好きだなんて……なんか、母性本能擽られちゃう~!」



彼女の目がバッテンになっている……。



若菜ちゃんの妄想はどんどん膨らんでいく。



がっかりするだろうな…。