翌朝も、いつも通り無愛想な仁が私の前を通り過ぎる。



それにも、もう慣れた。



――昼休み



社員食堂で若菜ちゃんとランチを摂っていると、弘人が声をかけてきた。



「千秋~!」



「弘人、どしたの?」



「これ、昨日帰りに渡そうと思ってて忘れてたんだ!」


そう言って、弘人が差し出したのはかわいくラッピングされた紙袋。



私への誕生日プレゼントだ。



「ありがとう~!」



「千秋に似合いそうな色だったから。」



中を開けてみると、入っていたのは薄いピンク色のカシミヤのストールだった。



大事に手に取り、ふわふわの手触りに思わず頬擦りをした。



「暖かそうだね!大事に使うね!」



弘人が照れ臭そうにしていると、その後ろから誰かが声をかけてきた。



「神田さぁん!」



“ガシッ”



私の目の前で、後ろからやってきた一人の若い女子社員が弘人の腕を掴んだ。



その子は、どうやら弘人と同じ部署の後輩のようだった。



「例の新商品の事で相談があるんですけどぉ、今いいですかぁ?」



甘ったるい声で弘人に擦り寄る。