「あなたに、恋をしたい」

ちょうどクライマックスに突入するシーンだ。

ヒロインが、裂けた底無しの谷へ落ちていく。
ハリソン・フォードが、すでにこの世を去った美女に手を伸ばす。
苦い後悔。
だが、次に彼の心を捕えるのは歴史的遺産の金の杯。
「いつ見ても、男前よねぇ」
「朱美さん。きいてます?」
恋する乙女よろしく、テレビに向かって熱い吐息を漏らす彼女に、思わず問い掛けた。
一応告白のつもりだったのだが。

「聞いてるわよぉ?私に恋したいんでしょ」

林朱美は画面を凝視したまま。