「楓……」
窓のない部屋。
あの日みた夢。
ああ、そうか。
楓は今、私を撮っているんだね。
はだけたシャツから覗く、彼の火照った肌に爪をたて、私は天井を見上げた。
分かる?楓。
ここは私たちだけの暗室。あなたが私に与えてくれた、ふたりだけの牢獄。
ずっと囚われていたかった。
あなたが止めた時間の中で、息を殺して生きていきたかった。
私はもがく。
ここから出てゆく。
空を求めて手を伸ばし
指先が風に触れるのを感じ
腐食した今日までの自分に、そっと熱い息を吹きかける。
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