Sugarless -君だけがいた時間-




安っぽいラブホテルしか、空いてなかった。


さすがバレンタインの季節だよな、と楓は何かを軽蔑するように笑って、かび臭い部屋のドアを開けた。


室内に入ると同時に、私たちは抱き合った。後ろ手にドアノブに触れ、その閉まる音を聞きながら、楓の唇を受け入れた。


ベッド行く?と尋ねられ、私は首を横に振った。

そんなもの、いらない。こうして部屋の片隅で衝動的に奪い合うのが、私たちにはちょうどいいような気がした。