Sugarless -君だけがいた時間-


砂糖とカカオの味が、舌の上に広がる。まったりと濃厚すぎる甘みで、酔いそうだ。

私は唇を噛みしめ、その端に付着したチョコの欠片を、指でぬぐった。


「……朝子と……結婚、するの?」

「うん」

「でも、ふたりとも、まだ若いのに」

「卒業したら籍を入れようって、ずっと約束してた」


チョコレートの甘さが脳まで響き、思考が痺れる。私はグラスをつかむと、カクテルを一息で飲み干した。口の中で炭酸が弾け、チョコの味を消し去った。

ぜんぶ、消えてしまえ。


「早紀も、式には来てくれるよな?」

「……」

「いつか早紀が嫁に行くときは、出血大サービスでお前のウェディングドレス姿、撮ってやるからさ」

「やめてよ!」


カウンターに突っ伏して、小さく叫んだ。ほとんど無意識にとったその行動が呼び水となり、歯止めがきかなくなる。