この日、楓が運転していた車は、三年前に見たのとは別のものだった。
「ローンで買ったんだ。頭金だけは親が出してくれたんだけど、毎月しんどいよ」
そう言って苦笑しながら、楓は三年前と同じ道を走った。
レストランの店内は、以前来たときと少し違うロマンチックな空気が漂っていた。そこかしこに花がさりげなく飾られ、テーブルクロスも淡いピンクだ。
「もうすぐバレンタインですから」と店員の女性が言い、なるほどなと納得した。
秘めやかで親密な雰囲気に身を委ねながら、私はグラスワインを注文した。
「俺も飲もうかな」
「でも車は?」
「代行呼ぶよ」
じゃあ、ということで私たちはワインを1本頼み、時間をかけてそれを飲んだ。



