「朝子らしいね」 私は言った。 「すごく、朝子らしい」 「うん」 「きっと彼女は……今も走ってるんだね。陸上以外の目標を見つけた今も、朝子は走り続けてるんだ」 そうだな、と楓は言った。あいつはずっと走り続けるよ、と。 私だったらそんな事しない。走るのをやめる。 立ち止まって、楓のそばに寄り添って、楓が用意した牢獄の中で、ずっと飼い慣らされてみせる。 「もうすぐ閉館だからさ、飯とか行かねえ?」 「うん」 「3年前に行ったあの店、行こう」