街は、あっという間に流れていく。 目的地もなく車に揺られる私は、もうどうなってもいいや、とすら思う。 すごいな。こんなに簡単に、自分を投げ出すことができるんだ。 メーターが7000円を越した頃、携帯が鳴った。知らない番号に少し戸惑いながら出てみると、それは意外な相手からだった。 『俺、わかる?』 「わかんない」 『こないだマリコちゃんの紹介で会った……』 「ああ、青年A」 『え?』 「ううん、何でもない」 私はクスクスと笑った。