「あれ舞香、食べないの?」

わたしは舞香の一口しかかじられていないパンを見て疑問に思った。
いつもはすごい勢いでパンを食べているというのに、どうしたのだろう。
もしかして風邪をひいてしまったとか。

「別に。食欲ないだけ」
「風邪ひいた? 舞香が食欲ないなんて」
「ひどいなぁ。わたしだって食べたくないときもあるよ」

わたしがおもむろに舞香の額に手を当てると、舞香はあからさまに嫌な顔をした。
そして視線をわたしからわたしのパンへと移し、溜め息をつきながら言ってきた。

「更沙だって食べてないじゃん」

そういえば、この頃食欲がない。
毎日同じパンで飽きたといえば飽きたけれど、食欲がわかなかった。
一体わたしまでどうしたのだろう。