目頭が熱くなるのを感じながら、わたしは舞香を見つめた。
舞香はすでにパンを食べ終えており、空になったパンの袋を無駄に丁寧に畳んでいる。
いつのまにか体の震えもおさまっている。

「でもすごいと思わない? たった一日で仲直りできたって。やっぱり離れてると寂しいよね。隣に更沙がいなくて、ものすごく変な感じがしたもん。あーあ、なんか運命感じちゃう」

ふふ、と自慢げに笑う舞香に、わたしは自分の限界を感じていた。
舞香の微笑んでいる顔が、ふにゃふにゃと揺れている。
気付けば視界はぼやけていて。

「……ごめん、舞香。我慢できない」

せめて涙が床に零れる前にと、素早く自分の腕で両目を覆う。
舞香はまるで子供を相手にするかのように、よしよしと無駄な効果音をつけて背中を擦ってきた。

ゆっくりと、優しく。
摩擦で温かくなる背中。

きっと、きっと、僻んでいた。
あんなひどい状況に陥っても笑える舞香を羨ましがっていた。
だからあんなひどいことを言ってしまった。

舞香だって苦しんでいたのに。
不安と恐怖に必死で戦っていうたというのに。

わたしはそんなことに気付かずに舞香を傷付けた。
それなのに舞香は許してくれる。
気にしないで。仕方ないよ、と朗らかに微笑んで。