それから三十分ほどわたしは泣いていた。
ミヅキの次の犠牲者が出る頃には、すっかり落ち着きを取り戻していた。

いつのまにか眠ってしまったのか。
ぼんやりとする視界が段々とはっきりしていくのを感じ、わたしは究極のだるさに襲われた重い体をゆっくりと起こした。
そして自分の体を抱くようにしてその場に座った。

情けないことにまだわたしの体は震えている。
先生が死んだときも、安藤が死んだときも、全てを投げ出したくなるような気だるさに襲われたけれど、こんなのは初めてだ。
全ての人が離れていってしまうような気がして、寂しくて、怖くて。
離れていく人たちを無言で見送ってしまうわたしが情けなくて悔しくて。

そんなとき舞香が隣にいないことに気付いて、わたしは辺りを見渡した。
凄まじい恐怖感に体が縮こまり、びくびくと怯えながら後ろ、右左を確認する。

「大丈夫。いなくなったりしないよ」

そんなわたしに降り掛かる声。
静かに優しくふんわりと温かみのある声。
最初は驚いて、だけどすぐに声の持ち主が分かって安心させられる。

ゆっくりと振り返るとそこには二つのパンを胸に抱えた舞香が、いつもの笑顔を浮かべて立っている。
悪戯そうに笑うと、ゆっくりとわたしの隣へ腰を下ろす。

「晩ご飯もらってきたよ。はい、どうぞ」

わたしは差し出されたパンを無言で受け取ると、慣れた手つきで袋を破る。
隣ではすごい勢いで舞香がパンに貪りついている。