そんなとき聞こえる、あの低くていやらしい声。
笑いを含んでいて、一層わたしを不機嫌にさせる。

「次の実験台に選ばれたのは――」

わたしとミヅキは顔を見合わせた。
次の犠牲者誰だろう、と肩を竦めてみせる。

「――有咲ミヅキさんです」

わたしの笑顔が凍った。
ミヅキは真っ直ぐに自分を指差す杉村を見つめている。

有咲、ミヅキ。
ミヅキ、ミヅキ、ミヅキ。
まさかわたしの隣にいるミヅキのこと?

わたしは理解できずに、呼ばれた名前を繰り返した。

頭が真っ白だ。
何も考えられない。いや、考えたくもない。
次がミヅキなんて信じたくもない。

「あーあ。指名入っちゃったよ」

ミヅキはまるで点数の悪いテストを受け取る生徒のような苦笑いを浮かべて立ち上がった。
そして驚きで何も言えないわたしの前まで屈みこんで、優しくわたしに言った。