「あっ、そうだ。あたしのことミヅキって呼んでよ。有咲さんじゃ堅苦しいでしょ」

それからずっと、わたしたちは自分たちのことについて話し合っていた。
ミヅキは外見と同じでサバサバとした人で、舞香とは全く別のタイプというところが新鮮に感じた。
少しきつい喋り方もわたしにとっては別にどうでもいいことだった。

「分かった。それじゃわたしのことも更沙でいいよ」

ミヅキとのお喋りは楽しくて、気が付けば夢中になっていた。
夢中になりすぎて、わたしたちがいまひどい状況下に置かれていることも忘れていった。


「ていうかなんでわたしと友達に? そこらへんがよく分からないんだけど」

わたしはふと浮かび上がった質問をミヅキにぶちまけた。
ミヅキは最初言うのを躊躇っていたが、わたしがずっと教えてと言っているので、渋々と話し始めた。

「あたしにもよく分からないけど、なんか更沙に惹かれたんだ。いつも楽しそうで、幸せそうで、近くにいたらこっちにも微笑めそうで」

ミヅキはやや俯き気味にそう言った。
他にも理由はないのとわたしはミヅキの顔を覗き込んで促した。
覗き込んだミヅキの顔は耳まで真っ赤で、本気で恥ずかしがっているんだなと思った。

「……友達なんていらなかったから作らなかった。もっともあたしが作れるわけないんだけどね。だけど初めて、一緒にいたいって思ったんだ。人を拒否し続けていたあたしが、初めて友達になりたって思ったんだ」

そう言い終わると、ミヅキはお預けを食らった犬のようにしょんぼりとこちらを見た。
無言でもういいでしょうと訴えている。