舞香の笑顔が脳裏に浮かび、わたしはパンを口に運ぶ手を止めた。

禁断症状だ。
一晩しか離れていないのに、こんなに会いたくなるなんて。
わたしがどれほど舞香に依存していたか、このときやっと思い知らされる。

「柳川さん、今日は一人なんだ?」

そんなとき後ろから名を呼ばれ、わたしは驚いて振り向いた。
すると目の前に迫っている有咲ミヅキが目に入った。
清潔感漂うショートカットを揺らして、不思議そうにわたしの顔を覗き込んでくる。

「有咲さんっ?!」

わたしはその距離感に驚いて腰を抜かしているのに関わらず、冷静に有咲さんが言う。

「いつも一緒にいるのに、珍しいね。喧嘩でもしたの?」

わたしは口篭ってしまった。
そんな様子を見た有咲が何かを察したらしく、わたしから離れてふうんと神妙な表情で腕組みをする。

「この状態で喧嘩って、問題じゃない? なんか柳川さん孤立してるし、精神的に大丈夫?」

痛いところを突かれた。
わたしはずばずばと事実を言ってくる有咲に返事代わりに引きつった笑顔を見せた。

わたしだってそんなこと分かっている。
それに喧嘩をしたのもわたしのせいだ。

だけど中々喋る機会がない。
全く勇気が出ない。
ごめんなさい、また仲良くしてください、と謝りたいのだけど。