「もう知らないよ。更沙がわたしのことを突き放すなら、わたしは更沙のことを捨てる」

舞香はくぐもった声でそう言い放った。

去っていく舞香の上靴、遠ざかる舞香の足音。
じわじわと涙が迫ってくる。
悲しみがわたしの心を攻撃する。

こんな理不尽なことをされて、苛々していた。
その苛々を偶然近くにいた舞香にぶつけてしまった。

舞香は悪くないのに。
舞香は必死でわたしを励まそうとしてくれていたのに。

「……う、うう……ごめんな、さい……」

こんな状況に陥って初めて謝罪の言葉が出たけれど、もう時すでに遅し。
舞香の姿はどこにも見えなく、クラスメートの数人がわたしのことを気味悪そうに見ていた。

「……あ、ああ……」

後ろで聞こえる伊藤さんの虚しい嘆きが、わたしの涙を誘った。
わたしは更に苛々して、自分に嫌悪感を抱いて、伊藤さんの喘ぎ声に追い討ちをかけられ、わたしはついに泣き崩れた。


初めて舞香と喧嘩をした。
わたしのせいで喧嘩をした。
舞香を理不尽に傷付けた。

一番人肌が恋しくなるこのときに、わたしは一番大切な人を失った。