「鬱陶しいの! ウザイの! あんた、浮いてるって分かってるでしょ? 独りだけ呑気に笑っちゃって……そう、いつもそう。初めて会ったときから、ばかみたいに笑っていた。それがわたしは鬱陶しくて……」
「……ひどいよ、更沙」

わたしの声を遮ったのは、小さな舞香の声だった。
いつもは出さない、低くて怖い声。
舞香が不機嫌なときに出す声。

もっとも、舞香の不機嫌なところなんて見たことないのだけど。

「えっと……あの、その」

必死で言い訳を考える。
もう言い訳なんて通用しないようなひどいことを言ってしまったのだけど、何か言わなくてはいけないと本能が訴える。

だけど黒い瞳がわたしをじっとりと見つめてくるから、焦って、焦って、舌が縺れて。

わたしは無言で床を睨んだ。
きっと間抜けな顔をしているのだろうから、見られたくなくて俯いた。

だけど、見なくても、舞香の表情は分かった。

悲しそうに、震える瞳で、わたしを捉えている。
そしてわたしがやったことを改めて考えて、落胆する。