「さてさて、皆さん食べ終わりましたね。それでは少し、これから過ごすこの場所について説明しましょうかね」

杉村はいつのまにかパイプ椅子に足を組んで座っており、いかにもわたしたちを見下しているようだった。
わたしたちはじいっと感情のない目で杉村を見つめている。
彼は四十あまりの目に見つめられて気味悪くないのだろうか。

「ここには人数分の毛布と簡易トイレを一つ置いておきました。いつでも自由に使ってください。食事については一日三食ちゃんと出しますので。なに、飢え死にはさせませんよ。
そしてそこに仕切られた空間がありますね。そこは即席実験室です。一人ひとり名前を呼ぶので、名前を呼ばれた方は急いでこちらに入ってきてくださいね」

杉村は体育館の隅っこに作られたバラックのようなものを指した。
その中でああも恐ろしいことが繰り広げられるなんて考えたくもなかった。

「さて、説明はここで終わりです。時間がないので、てきぱきと動きましょうね。それでは一番は――」

ごくり、と生唾を飲んだ。
そしてゆっくりとあがった杉村の指先の方向を見る。

今日一番の餌食は誰?

「――安藤くん、君です」

杉村の指先はしかと安藤の頭を示していた。
安藤は全ての力が抜けてしまったようにぺたりとその場に座り込んだ。
この先には絶望しかないと知っているから、安藤の表情は暗く、壊れたような曖昧な笑みを浮かべていた。