「すみませんね。こちらとしてもあまり高価なものは出せないんですよ」

お盆の上に乗せられたパンを指して、申し訳なさそうな笑みを浮かべる杉村。
その笑みが白々しくて、腹が立った。

みんなは昨日の夜――夜と確定はできないが、たぶん夜だろう――に見せた遠慮なんて忘れたように、パンにがっついていた。
わたしの目には挑発しているように見えて、杉村がこのようなわたしたちの様子をどう思っているか怖くなってきた。
そう思って杉村の方をちらちらと見ていると、不意に杉村と目があってしまった。
わたしはすぐに目を逸らしたらが、杉村がわたしをばかにしたように哂っているのは目に見えている。

「更沙、パン食べないの?」

そんな声がして振り返ると、もうパンを食べ終わってしまってわたしのパンを羨ましげに見る舞香がいた。

「あ、うん……お腹空かなくて。いいよ、食べて」

わたしがそう言うと舞香は嬉しそうな顔をしてパンを食べ始めた。

人が一人死んだ。
わたしたちの目の前で死んだ。
そんな状況にわたしたちはいる。

というのに、よく食べ物が食べられるな。
わたしは周りのクラスメートを見てそう思った。
今わたしの胃の中に何かをいれれば吐き出してしまうだろう。