休み時間、わたしはやる気を起こそうとトイレの鏡の前で自分の顔を叩いていた。
休日だからか、なぜかやる気が出なかった。
鏡の中の自分は、口をへの字に曲げていて、いかにも不機嫌そうだ。

憂鬱なのは、みんな一緒のはず。
だからこんなところで項垂れているのは、時間の無駄だ。
きっと月曜日は振り替え休日になるはず。

そんな期待と共に、わたしは鏡の中の自分に応援メッセージを送る。

「受験生なんだし、頑張らないとね」

なんて淡々としたメッセージ。
わたしらしいといえばわたしらしい。

くすり、と抑えられた笑い声が、誰もいないトイレに響いた。
そこで初めてわたしが自分のことを嘲笑していることに気が付いた。

わたしはそれを少し虚しく感じながら、トイレから出た。
するとどこかの窓が開いているのか、風が吹きぬけ、わたしの色素の抜けた髪を乱れさせた。
異様なほど生温かい風に気持ち悪さを覚えながら、わたしは教室に向かって歩いていった。