「俺らに会いたがる奴なんて、いねぇよ」

桧野が席に着いた後も、投げやりにそう言った。

会いたがっている人がいるなんて理由、桧野の言うとおり嘘くさい。
本当はもっと深い理由があるんだろう。
それをわざわざ隠すなんて、白々しいったらありゃしない。

「仕方ないだろ。俺だってあんま知らされてないんだよ。だけど絶対に全員来させろって言われたんだ」

先生はそんなくだらない嘘をつくような人じゃない。
教師というものに懐きにくいわたしたち問題児も、この先生だけはなぜだか好きになれた。

それに、二十七歳という若さでこのような問題児クラスを任される先生にも知らされていないなんて、なんだかおかしい。

何か裏がありそう。
そんな不安が過ぎったが、あえて授業に没頭することにした。