わたしは開いていた教科書をぱたりと閉じ、ふわあと欠伸を一つした。
その様子を溜め息をつきながら見る担任の先生。
注意をしても直さないことを知っているから、何も言わない。もしかしたら飽きれて何も
言えないのかもしれない。

「それじゃあ、数学はここまで。十分の休憩を挟んで、また数学だ」

先生は自分の時計を覗き込み、そう言った。
その言葉を耳にした途端、教室は解放感に包まれる。

みんなが席から立ち上がろうとしたとき、一人の生徒が挙手した。
はい、と元気よく手を挙げたのは、桧野アキラという男子生徒。
何かとポジティブで、クラスでは中心的存在の男子だ。

先生が優しい笑顔で、なんだ? と尋ねた。
みんなは席を立つタイミングを外してしまい、仕方なさそうに席に着いた。

「どうして今日は休日なのに学校があるんですか? それもこのクラスだけ」

桧野は表情も変えず、そう言った。
教室が凍りついた。
先生も驚いたように、目をぱちくりと見開かせている。

それは今までみんながとても気になっていて、だけど聞けなかったことだった。