「ねえ、お願いよ」

わたしを抱き締める手の力が強まる。

「泣いて。わたしの胸で泣いてちょうだい」

びくり、とわたしの体が震えた。
こんな言葉が来るとは思ってなかったのだ。
わたしは動かぬまま、次の言葉を待った。

「更沙ちゃんは、いつも感情を隠している。悲しいときも、苦しいときも、いつだって笑っている。泣きそうな顔で、だけど口をひきつらせている。見ていると痛々しいのよ」

泣きたいよ。

だけど、いつも、遠慮してしまって。
泣くことは弱いから、誰かに弱い部分を見せるのは嫌だから。

わたしは叔母さんのお腹に顔を埋めた。

「ねえ、わたし……そんなに頼りないかしら」

ふるふると首を振る。
一生懸命に振る。

「……っ、う、……」

いつのまにか溢れていた涙に気付かぬまま。
いつのまにか漏れていた嗚咽に気付かぬまま。

そっと、叔母さんがわたしの背中をさすってくる。
ぎゅ、と叔母さんの匂いが染み付いた服を引っ張る。顔を寄せる。

安心する。
ここにいると安心する。
そしてこの場所を作ってくれているのは、叔母さんじゃなく、あの人だ。

「おか、あ、さん」

だけどわたしを生んでくれたわけじゃない。
親子ではないけれど、わたしに母以上の愛を注いでくれた人。

ありがとう、叔母さん。