「漫画読みかけだったのになぁ」

なんて能天気なことまで言い始めてしまった。
わたしは舞香にことの重大さが分かっていないのかと思い、大きな声で言ってみた。

「ねえ、わたしたち捕らわれているのよ？　家に帰れないのかもしれないのよ？　それなのになんでそんな能天気でいられるのよ」

すると舞香は目を真ん丸くして、その直後ににたりと笑った。

「更沙は馬鹿だなぁ。しばらくの間わたしたちが家に帰ってこなかったら、家族が警察に届けるでしょ？　これ、絶対なにかのドッキリだって」

そう楽観的に言い切れる舞香が、少し羨ましかった。

わたしたちのクラスにドッキリが仕掛けられるなんて普通に考えて有り得ない。
それに警察に届けるって言ったって、わたしたちが殺されてからじゃ意味がない。

「まあいいや。それじゃあ、そういうことにしておく」

だけど今はパニックになって騒いでいるよりも、そうやって前向きに考えた方がいいのかもしれない。
わたしはそう思い、舞香の意見に同意することにした。

その後もわたしは舞香の楽観的な話に付き合っていた。
するとなぜか、不安や恐怖が自然と抜けていった。