杉村は注射を手に取った。
注射器は至って普通のものだった。
サイズも、針の大きさも、予防注射で使うものとほぼ一緒だった。
だけどそこから与えられる恐怖は、言葉で言い表せられないようなものだった。

「可哀想な子だ」

再びそんなことを呟きながら、杉村は注射器をわたしの腕に近付けた。

怖い。
嫌だ。
死にたくない。

恐怖から逃げるかのように、ぎゅっと目を瞑った。

「だけど大丈夫。君は今から世界を救うんだ」

最後に、そんな言葉が聞こえた。
次の瞬間、わたしは――