目を覚ましたとき、体育館は橙色に染まっていた。
久々に見た夕日は美しすぎて、目にしみた。

「おはよ、柳川。水飲むか?」

目の前には桧野がいて、わたしに水の入ったコップを差し出してきた。
わたしはコップを受け取ると、ぐいと一気に飲み干した。
水の冷たさが、わたしの脳を活性化させた。

「今、何時?」
「分かんないけど、五時くらいじゃねえの? 今さっき四人目がいったところ。俺ら、幸だか不幸だか分からないけど、生き残ってる、らしい」

らしい、なんて遠回しな言い方。
だけどこの命も明日になったら尽きてしまうのか。

そんなことを思っていると。

「舞香は?」

違和感に気付いた。
いつも隣にいる舞香がいない。
どうしてかと桧野に視線で訴えると、桧野は俯いてしまった。

そんな桧野の行動に、わたしはやっと思い出した。
舞香は、もう名前を呼ばれたことに。