気が付けば、叫んでいた。
我を忘れて、叫んでいた。
もう舞香の姿はバラックの中に消えたというのに、性懲りもなく。

叫ぶことも泣くことも、赤ん坊でもできる、簡単で稚拙なこと。
それを分かっていたけれど、やめられなかった。
思いを吐き出さなければ、体の中に溜まって、もっとおかしくなりそうで。

「いやああ……や、やあああ……やだよぉ……わ、たし……の、親友を、連れて行かないでよお……」

だけど伝わらない。
必死で叫んでも、足掻いでも、乞うても。

杉村はにこりと微笑むだけ。

「うあ、ああ、やだあ、やだ、やめて」

きっともう舞香は死んだ。
わたしが叫んでいたから悲鳴が聞こえなかっただけで、きっともう死んだ。
わたしの悲鳴に包まれながら、苦痛に身悶えしながら、死んだ。

そう思うと、また怒りが、悲しみが、溢れてくる。

わたしの大切なものを奪わないで。
願いは、それだけよ。