ゆっくりとわたしの方を見返す杉村。
その威圧感に圧倒されながらも、なんとかわたしも杉村の目を食い入るように見る。

「ごめんね。これも国のためなんだよ」

だけど杉村はあっさりとそう言うと、舞香の手を掴んでいた男に目で何かを伝えた。
それは早くバラックへ連れて行けということだろうとすぐに悟った。
舞香の手が強い力で引っ張られた。

油断していた。

わたしの指から舞香の手がすり抜けていく。
小さくなっていく、舞香の姿。
ツインテールが揺れる。

「ま、いか……」

行ってしまう。
舞香が死んでしまう。
わたしは何もできずに、見ているだけ。

一度はおさまった涙が、またぶり返す。