「おはようございます、皆さん」

わたしたちの気持ちとは裏腹に陽気な声をあげる杉村。
だらだらとどうでもいいことを喋る杉村を見て、この男は命というものをどのように思っているのだろうと考えた。

どれくらいこの男を憎んだだろう。
どれくらいこの行為を許した国を怨んだだろう。

だけど、思っても、無駄で。
だけど、動けばいいという問題でもなくて。

「さて、と……今日はですね……」

わたしたちはあまりにも無力で。

「吉沢舞香さん。あなたです」

杉村の短かくて見栄えの悪い指が、わたしの隣に座っていた舞香を指す。
杉村の低くて気持ちの悪い声が舞香の名前を呼ぶ。

どうかわたしの耳が狂っていますように。
どうかわたしの目が狂っていますように。

微動だにしない舞香を見つめながら、そんなことを思った。

「吉沢さん、あなたです」

動かない舞香に、優しくはにかみながら杉村が言う。