ふと、頭の中に疑問が湧いた。
窓から高屋くんへと、視線を移す。

「ねえ、なんでカーテンが開けられたと思う?」

唐突なわたしの質問に、高屋くんの顔が歪む。
何やら必死で答えを探しているみたいだ。

「詳しいことはよく分からないけど、もうすぐ終わりだからじゃねえの?」
「ああ、そういえば今日で六日目か。明日で、終わりなんだね」

六日間も、よく耐えられたもんだな、わたし。
そんなことをぼんやりと思いつつ腕組みをする。

「それまでに俺らはあのバラックの中に一度は入らなきゃいけない」

びしり、と突きつけられる現実。
思わず目を伏せてしまいたくなった。

このまま、現実から目を逸らせればいいのに。

そう思いながらも、わたしは生返事をする。

「分かってるよ。それくらい」
「分かっているような顔じゃないけどな。まあ、お互い頑張ろうぜ」

頭に衝撃がきたと思ったら、ぐしゃぐしゃと髪を撫でられた。
わたしをすっぽりと包んでしまいそうな大きな手。

ちょっとやめてよ。
そう言うつもりで隣を見ると、高屋くんが悲しそうな顔をしていた。
今にも泣きそうな、さっきの明るい声音では考えられないような表情だった。

心の中で、小さく悪態をついた。
あんたは分かりすぎているのよ、と。