目覚めると、右には舞香、左には桧野が寝ていた。
二人とも気持ち良さそうに毛布に包まっている。
まるで二人の子供を持つ母親になったような気分だ。

なんでだろう。
昨日楽しい思いをしたからだろうか。
妙に今日は清々しい。

「柳川、起きたのか」

そんなとき、後ろから鋭い声が聞こえた。
驚いたものの、それはクラスメートのものだと分かったので、安心して振り向く。

するとそこには聞き覚えのある声と、見覚えのない顔。
一生懸命誰の声かと脳を働かせる。

「え、っと……高屋くん?」
「ああ。ひどいな、忘れるなんて」
「忘れたわけじゃないよ。ただ……随分変わったね、高屋くん」

お互い話すような仲じゃなかった。
だけどクラスメートの顔を忘れるほど馬鹿じゃない。

「そうか? 鏡見てないから、分からないな」

高屋くんはそう言って自分の顎を撫でた。

会話が、続かない。
話すのもこれが初めてだから、どのように会話を発展さればいいのか分からない。
わたしは困って、わざとらしく高屋くんから目を逸らした。

ふと、高屋くんが呟いた。

「朝、だな」