「……そう。まあ、うん、まあいっか。舞香もいいよね」
「いいよ。この監禁生活始まって五日も経って、異性とかどうでもよくなったし」
「それって俺が男として意識されてないってこと? うっわぁ、それショックなんですけど」
「五月蝿い。黙れ」

さっきと打って変わってふざけた様子の桧野に、舞香がすかさず暴言を吐く。

「この吉沢とそこらへんで泣き崩れて発狂していた吉沢が同一人物だと思えんな」
「あんただってわたしの胸で泣いたでしょうが、桧野」
「え、何それ、わたし知らない。桧野泣いたの? ていうか更沙、胸貸したの? ちょっと、わたしの知らない間にそんな関け」
「わ、それはシークレットだろ、柳川! あー……でももう少し抱きついてればよかったかも、なんちゃって」
「このウジ虫野郎が。失せろ」
「うわ、マジすみませんでした。生意気言ってすみませんでした」

こんな時間が続けばいいのに。

ふと、そう思った。
今までの残虐な過去と、これからの目を伏せたくなるような未来なんて考えないで。

こんな平穏な時間がずっと続けばいい。