舞香が落ち着きを取り戻したのは、もう夜のことだった。
夜というか、四人の犠牲者が出、夕食を出され、寝る仕度をしているときだった。

毛布に包まっていると、泣き腫らした目で舞香が聞いてきた。

「ねえ。わたしたち、何かしたのかな。何も、してないよね。それなのに、なんでこんな……」

それはこの状況に陥ったとき、誰もが最初に感じただろう質問だった。
だけどショッキングな出来事が次々に起きて、ゆっくりと考える時間がなかったのだ。

「分かんない。どうしてわたしたちが選ばれたのか……」
「だけど、やっぱり問題児を集めているから……? 具体的に言えば問題児じゃないけど」
「そうなのかなぁ……。他のクラスに比べて、ここは団結力もいいし、最高のクラスだと思うんだけどな」

でも客観的には問題児クラス。
このクラスに入らないと分からないクラスの良さというものがある。

「わたしも、そう思うよ。だけど、わたしたち、まだ十五歳だよ?」
「せめてもう少し青春したかったね」

まるで年寄りのように、そう呟いた。

思えば恋をしたことがなかった。
小学生のときはそれどころじゃなかったし、中学生も何もなく過ぎ去ってしまったから。
今年は受験だからそんなことはできるわけない。

ちょっと勿体無い。
いや、ものすごく勿体無い。

折角ここまで生きてきたたんだから。
色々なことがあったけれど、確かにここまで生てきたんだから。

もう少し生きて、色々なものを見て、知って、満足して。
それから、死にたかった。