真正面からぎゅっと舞香を強く抱き締めた。
小柄な体は更に細くなっていて、少し力を加えれば簡単に折れてしまいそうだった。

「やめよう。こんなこと。舞香を殺すことなんてできない」
「ううん、やめないよ。お願い、更沙。わたしを殺して。更沙しか……できないもん」

わたしは舞香の髪に顔を埋めて、しばらくの間黙っていた。
舞香の髪からは少し嫌な匂いがした。
お風呂に何日も入っていないんだ。仕方がないことだろう。

「嫌。できないよ。殺したくないもの。わたしは親友を殺すことなんてできない。舞香を失いたくない」

舞香が言葉を発するたびに、肩のあたりが僅かながら温かくなった。
舞香の口元がわたしの肩のあたりに位置づけられているので、吐息が肩にかかるのだ。

「いいから、殺してよ」
「できないって言っているでしょ」
「いいから!」

投げやりな言い方。
声音が荒れている。
苛々しているのだろうか。

わたしも融通のきかない舞香に対して、少しだが怒気を感じた。

「わたしの気持ちを無視しないでよ。わたしはそんなことしたくないの」

少し冷たく言うと、急に舞香の反応が消えた。
さっきまでああ言えばこう言う状態だったのに、どうしたのだろう。