ぞくり、と体の芯が冷えた。
わたしはすぐに杉村から視線を逸らし、情けないほどに縮こまって嗚咽を漏らしている舞香を見つめた。
だけどすぐに居ても立ってもいられないくらいの切なさに襲われ、泣き喚く舞香の背中を擦りながら、何度も何度も励ましの言葉を投げつけた。

大丈夫。大丈夫だから。
安心して。もうすこし肩の力を抜いて考えようよ。
大丈夫だよ、わたしがついているから。

なんて嘘くさい言葉なんだろう。
なんて頼りのない言葉なんだろう。

だけどわたしにはそんな言葉しか言えなくて。
その場凌ぎにしかならないと知っていたけれど、やめなかった。

「……さら、さ……」

そんなとき、呻き声に似た小さな声がわたしの名前を呼んだ。
わたしは涙で額に張り付いてしまった前髪を払い除けながら、どうしたのと出来る限り優しく問う。

「わたしを、殺して……?」

無理して作ったのが丸分かりのぎこちない微笑み。
目は虚ろで、どこを見ているのか定かではない。
舞香と名づけられたその存在は、息でも吹きかけてしまえば消滅してしまいそうなほど儚く見えた。

その発言に少し驚いて。
その表情を見て無性に悲しくなった。

そのときのわたしはひどく情けない顔をしていただろう。