「わたしが……わたしを?」

ゆっくりと、確認するかのように舞香が呟く。
わたしはあえて笑顔で頷いた。

「怖いの?」
「怖くなんてないよ」

上擦りながらもそう答える舞香が無性に可愛らしく見えたのはなぜだろう。
もう今では舞香の言葉の一つ一つが強がりにしか聞こえなくなっていた。

「はい、どうぞ」

わたしは自分の手の中にあった破片を、舞香の手の平に乗せる。
舞香はその破片を自分の顔の前まで近付けて、やけに落ち着いた表情で呟いた。

「最初からこうしておけばよかった」

そして破片を持ち直し、自分の手首にゆっくりと破片を近づける。

わたしは照明に反射してきらきらと光っている破片をぼんやりと見つめていた。
小さいくせに、破壊力は計り知れない。
そんな破片が、ゆっくりと舞香の肉に食い込もうとしている。

だけどその指が確かに震えていることに、わたしは気付いた。
まだ舞香の綺麗な白い肌を傷付ける前だった。