杉村の命令に従って、一列に並んでいたとき、ふと昔舞香とした桧野の話を思い出した。

ああ、そうか。
うっかり忘れていた。
桧野は死を一番に恐れていて、死を軽く見ているやつが大嫌いなのだ。

杉村のべっとりとした視線を感じながら、わたしは心の中で昨日の一件について考えていた。
桧野にとって死んだ方が楽だという考えは、ものすごく無意味でイラつくものだっただろう。
わたしは隣にいる桧野に心の中で謝った。

「十二人ですか……。随分と減ったもんですねえ」

突然聞こえた図太い声に、わたしははっと顔をあげた。
わたしたちを並ばせた杉村は、パイプ椅子に腰掛けて困ったように顎を撫でていた。

「あんたらがここまで減らせたんだろ」

杉村の言葉に、即座に反応する桧野。
ここまで冷静にいられるのはきっと桧野だけだろう。
隣の隣では誰かがぶつぶつと呪文みたいに長ったらしい言葉を呟いているし、そのまた隣は立つこもできなくその場に死んだように倒れている。
舞香だってどこか上の空で天井を見上げている。