桧野が死ねという言葉に過剰反応して、死に対していつも恐れているということを、たぶん、あのとき初めて知った。

「おいおいおい、ビックニュースだぜ! 三組の奴が苛められていたみたいでさ、自殺したって!」

朝からハイテンションで教室に駆け込んできた一人の男子生徒の言葉に、教室にいた誰もが絶句した。
さっきまで騒がしかった教室が一瞬にして静寂に包まれる。

いじめ。
自殺。
三年四組の生徒はそれらの言葉と縁がある者が多かったので、尚更その反応は濃かった。

特に桧野の反応は凄まじかった。
さっきまで友達と楽しそうにお喋りしていた明るい表情は、段々と蒼白になっていく。
そして目は見開きながら、男子生徒の言った言葉を繰り返す。

「いじめを受けていて……自殺?」
「ああ。さっき先生が話していたの聞いちゃってよぉ……。やっぱり飛び降り自殺。裏庭に昨日の夜……。屋上に遺書っぽいものが置かれてて、それによれば言葉の暴力……とか、パシられていたとか、先生とかに悟られないようにやられていたらしいぜ」

男子生徒が声のトーンを下げてそう言う。

「もしそいつが先生とかに相談していたら……このクラスに来て、自殺なんてせずに済んだかもしれないのに!」

少し涙声で桧野が叫んだ。