「もう死ぬんだからとか、ネガティブなことばかり言っていてもつまらないだけだぜ? 信じろよ。少しでも期待しろよ。生きているのは幸せなことなんだから、もう少し楽しめよ」

憂いを帯びた声で、桧野は言う。
楽しめっていうのはちょっと無理なんじゃないか?
そんなわたしの考えを見透かしたように、桧野が肩を竦めた。

「俺だって痛感してる。ここで起こっていることはマジで、あと三日しか生きていられる可能性はない。だけどな、あと残り僅かなこの時間を、大切にしようと思えよ」

桧野は安心したような、悲しそうな、作ったのが丸分かりのぎこちない微笑みを浮かべていた。

「もう少し欲を出せ。もっと生きたいって思え。まだしたいこと、たくさんあるだろう?」

わたしは桧野の言葉に、大きく頷いた。

大切なものがたくさんある。
失いたくないものがたくさんある。
できるならもっと生きたい。
まだ十五歳なんだから、もっとこの世界を堪能してみたい。

わたしの頷きに、桧野は嬉しそうに笑った。