一応は答えようと、常識の範疇での理由を取り繕う。

「えっと……あ、たぶん、痛いの、嫌だからじゃないかな。あと、死ぬのが嫌だか……あっ!」

そうして、気付く。
わたしは死ぬのが嫌だったんだと。
この先どうなるか分からないという不安と、この世界への執着。
死んだ方が楽だと結論を出したけれど、体は正直にまだ生きたいと叫んでいた。

何かを悟ったようなわたしの表情に、段々と桧野の表情が緩んでいった。
本人的にはいつものように笑っているようなのだろうけれど、見ている方が悲しくなってしまうほど弱々しい微笑みだった。

「死ぬのはな、本当に怖いんだ。予想できないほどの怖さだ」

桧野はまるで死を知っているかのような口調で言ってきた。
焦点は定かではなく、どこを見ているのかよく分からなかった。