じめじめとした研究室に、若い男の声が響いた。


「博士。今まで様々な薬を作ってきましたが、全ては人体実験が必要です。如何しましょう」

「動物だけでは不安定だからな。だが、人体実験か……。難しい課題だ。かといって止めれば、今までの研究が水の泡だ」


博士と呼ばれた男は、顎をさすりながらううんと唸る。
その様子を見ていた若い男が、しばらくの沈黙のあと、ああ、と大きな声をあげた。


「博士、それならば今増加中の小中学生を使うのはどうでしょうか。一校くらいなら、国に差し支えませんし。人口もちょうどよくなるんじゃないですか?」


まるで遊びについて語っているような軽い口調だった。
だが放った言葉は身が凍るように恐ろしいものだった。

博士はその言葉に力強く頷いた。そして目をきらりと輝かせ、若い男に命令した。


「ああ、それがいいかもしれんな。世界の為なのだから、悪い話ではないだろう。今すぐに全校に電話を繋げ」