「………っ」



その声に反応して、つい、持っていたバスケットボールを落としてしまった。


ハッとしてボールを拾い上げると、帽子を深く被り直し、クルリと後ろを振り返った。


やっぱり、あの人だ……。



「なぁ、お前って確か……」

「─…す、すいませんでした!」

「はぁ?」



怖くて。

恥ずかしくて。

泣きそうで。


話し掛けられたけれど、慌てて持っていたボールを彼に突き出した。



「ちょっ…!?」



そして、そのまま家へ全力疾走する。

自分でも信じられないくらい、速く走った。