「わたしがあなたのお母さんに会ったのは昨日が初めてなんだよ。わたしが殺すわけないよ。」
おじさんは一切表情を変えない。いつもの笑顔のまま。そのせいか言葉に抑揚がなく、薄っぺらく聞こえる。
下手な役者のセリフのようだ。
おじさんを犯人だと信じてやまない私は、間髪入れず反論する。
「じゃぁ誰が殺したの?私が殺したって言うの?このペンションにいるのは私たちとあなただけだったじゃない。」
「もう訳が分かんないよ」と頭を抱え込んだ私の肩にそっと両手を乗せ、つぶやく。
「大丈夫だよ。すぐに解決する。」
催眠術師なのかと思うほど、彼の言葉には説得力がある。
正しく言えば、説得力しかない。真実だと信じてやまない。
不思議と呼吸も気持ちも落ち着きを取り戻していった。


