ベニとでも名付けよう



母の死体を見ても、私は涙一つ出ない。


朝、いつも母は死んでいたから。


でも今度は正真正銘、死んでいるんだ。


もう起きることはない。


それに気づいたのは、首を絞められたであろう赤い跡を見つけてからだった。


私は取り乱した。とても静かに。


「救急車呼んでください…。お母さんが起きない。」


「いや、呼ばない方がいい。もう死んでるよ。」


時刻は9時半を回ったころだった。