「あなたたちは、平和そうな顔してるものね。苦労なんてしたことないって、顔」
その人は、気だるそうにまた、髪をかきあげた。
「純は父親がいないし、母親は男に媚売ってばっかりらしいよ。
あなたたちみたいな温かそうな家庭で育った平和な学生とはわけが違うのよ。
自分が食べる分くらいは、自分で稼がないと生きていけないの」
その言葉を聞いて、返す言葉がなかった。
そんなこと、想像もしたことなくて。
そんなものを、背負っていたなんて。
「あいつは、どこで働いているんです」
呆然と立ち尽くしているわたしの隣で、浅野先輩は少しいら立ちながら尋ねていた。

